
紙を創る。 vol.1
一枚の紙には、土地の物語、作り手の人生のすべてが詰まっている。
和紙は、その地で採れる植物と水と光と風から生まれる。いわば、土地の風土を表現したものが、和紙である。
植物の繊維を裂き、枠の中に水を溜めながら、紙を仕立てるものとは違い、和紙は水を流し込みながら漉き上げ、純度の高い透き通る紙に仕立てていく。植物というよりも、それは、水が堆積したかのような、非常に透明度の高い紙なのだ。この紙の製法は、日本の水がないと成り立たない。硬度の高い水と違って、日本の水は大変やわらかい軟水である。このやわらかくて、清冽な水があるからこそ、独自の製法のもと、和紙が生まれたという背景がある。

漉き上げた紙は、一枚一枚板に貼り付けて、たくさんの光を浴び、そして、その地に吹く風によって、ゆるやかに乾かしていく。光を浴びることで、紙の透明度が高まり、白さを増していく。冬の極寒の時期こそ、その透明度も白さも増していくという。自然の風は、よりやわらかな質感に紙を仕上げる。独特の光沢と質感は、自然の豊かな風土が生み出したものである。

さらに、風土、素材、手法、季節、時間をも計算し尽くした、作り手たちの知恵と工夫の連続によって、より美的なものとして創り上げられてきたのが、和紙、という世界観であり、物語だ。
一枚の紙には、土地の物語、作り手の人生のすべてが詰まっている。
- PhotosYoshiyuki Mori
- WordsAtsuko Ogawa
- DesignNoriaki Hosaka