
人から人へと伝えゆく vol.1
祈る。感謝する。関係を結ぶ。結びは、心と心、人と人を深く結びつけるものでもある。
日本の「贈り物」の象徴ー水引。
水引ー水を引く。
紙で出来たその紐をなぜ、水引と言うのだろうか。
水引糸を撚るかのごとく、和紙を撚り、長い紙縒(こよ)りにし、糊水を引き、乾かす。紅白など色をのせる。ここから、水引と言われるようになったとされているが、さらに古からの記憶に遡っていくと、水にとても縁が深いようである。

航海の無事を祈る為の結びー日本と大陸を繋ぐ遣隋使だった小野妹子が隋から船で渡り持ち帰った贈り物に結ばれていた紅白の麻紐がその起源だという。
和紙と言えば、高知がその産地として四国圏内では名高いが、愛媛もかつては、和紙一大産地だった。手仕事の紙漉きは、大量生産の製紙産業へと変遷を遂げ、名だたる企業がここで紙を生産し、国内でも有数の生産量を誇る。
一方で、この地では、その残された記憶を紡ぐかのごとく、水引が作られ、伝統工芸としての結びの文化ー「伊予水引」が受け継がれている。近年では、水引も機械化され、特に中国生産のものが世の中には多く出回っているが、やはり、手仕事の美しさには叶わない。

手の内から、スルスルと生まれくる、その美しい造形物。祈る。感謝する。関係を結ぶ。結びは、心と心、人と人を深く結びつけるものでもある。一本の結びに込められた、時の流れと人々の営みに想いを馳せる。
- PhotosYoshiyuki Mori
- WordsAtsuko Ogawa
- DesignNoriaki Hosaka