人から人へと伝えゆく vol.2

自然と人、人と人、物と人、あらゆる関係性や繋がりから、生まれくるものに感謝をし、物の結び目にも祈りの心を表す。

日本人にとって「贈る」とは、古来から、大切な文化として受け継がれている「行為」である。

贈るとは、「感謝の心」を示すことであり、その原点は「お供え」である。

自然への恵みに感謝をして捧げる料理を「神饌(しんせん)」という。その土地でとれる素材を用いて、一番の「ごちそう」をこしらえる。日本のお供えのはじまりは、神饌だとされている。土地の神様に祈りと共に捧げ、そして、お祭りの最後に、皆で分かち合いながら食す。祈り、食して、感謝する。素材への感謝、四季の恵みへの感謝。贈ることの原点にあるのは、感謝し、ともに分かち合うという心にある。ここから、結婚や出産などの節目や季節の節目に贈り物をする、という伝統が生まれてきた。

「結び=むすび」という言葉にも、人と人、心と心を結ぶ、特別な意味が込められている。縁や心を繋ぎ合わせる「むすび」は、産霊(むすひ)が語源とされ、万物の素ーすべてのものが生まれてくる原点、万物を産み成長させることを意味する言葉でもある。自然と人、人と人、物と人、あらゆる関係性や繋がりから、生まれくるものに感謝をし、物の結び目にも祈りの心を表す。

贈る。結ぶ。

この2つの言葉から見えてくるのは、一方通行のやりとりではなく、関係をつなぎ、結び、そこに感謝をする、という日本人の心である。

  • PhotosYoshiyuki Mori
  • WordsAtsuko Ogawa
  • DesignNoriaki Hosaka